琉球王国の時代において、ユタの問題は深刻なものがありました。為政者にとっては従来の権威に対する挑戦そのものですし、地方自治体である間切あるいは村にとっては秩序維持の妨げになりかねない存在とみなされたからです。それにも関わらずユタの権の暴走を止めることができず、しかも特徴的なのは貴賤職能を問わず琉球王国の女性のほとんどすべてがユタの権威に服従する状態になってしまいます。
何故当時の女性たちは身分を問わずにユタの権威に盲信的になってしまったのでしょうか。その答えは明白で、
1.文字が読めずに学問の世界から遠ざけられていたこと。
2.それ故に必要以上に祖先崇拝の念が強くなってしまったこと。
3.医学が未発達であったこと。
の3点が考えられます。日本の歴史、特に同時期の江戸時代において各藩内の女性のほとんどすべてが呪術行為を行う者の権威に盲信的であった件は、ブログ主は寡聞にして存じません。
たとえば身内あるいは自身の(身体的あるいは精神的)トラブルが原因でユタに相談した際に①何代前のご先祖様が関連しています→②供養が足りないのが原因です→③では私が供養しましょうと提案されたらまったく反論できません。ユタの診断(ハンジーという)に何となく納得いかない場合は、別のユタを訪問して同じ相談をしてもだいたい同じ回答が返ってきます。結局は高いお金を払ってユタが供養するというパターンが何百年も続いてしまいます。
余談ですが、現代も含めて沖縄県民はご先祖さまに対する崇拝の念が強すぎます。ご先祖さまに対する感謝の念と崇拝との区別がつかないのです。現代を生きる我々がご先祖さまに対して感謝の念を持つのは自然の感情ですが、だからと言って必要以上にウグァン(拝み)をする必要はないのです。典型的なのがトートーメー(位牌)の継承問題で、女性がトートーメーを継いだら先祖に祟られるというのは迷信以外何物でもありません。
トートーメーに限らず個人救済であるキリスト教の信者なんで、ご先祖様をないがしろにする行為そのものなので、信者はご先祖さまのお怒りで全滅しなければならないのですがそんな事実はありません。ユスガミ拝んで(キリスト教のこと)若い女性と東京に不倫駆け落ちした伊波普猷先生なんて、ご先祖さまのお怒りで惨たらしい死を遂げないといけないはずですが、71歳まで長生きしてかつ沖縄学の研究を全うしてお亡くなりになります。
冷静に考えると、ブログ主が知っている限りユタの診断(ハンジー)は全くと言っていい程筋が通っていないのですが、一度定着した権威に逆らう行為は現代のように思想信条が自由の時代でも至難の業です。ましてや文字を知らずに旧慣習の中で生きてきた琉球王国時代の女性たちがユタの権威に対抗するのは絶望的に不可能だったと言わざるを得ません。(続く)