先日ブログ主は、宮里松正(みやざと・まっしょう)著『米国支配27年の回想』を参照中、46㌻に次のような記載がありました。
54.08.30 米国民政府のディフェンダーファー情報敎育部長は、記者会見で、「人民党が日本共産党と気脈を通じて行動していることは明らかであり、そのことは、日本共産党の指令とも符合する」と述べ、日共の指令「日共の対琉要綱」を公表した。
そこで実際に当時の新聞(琉球新報、沖縄タイムス)および仲宗根源和著『政界診断書』を照合して、全54項からなる指令書とやらを確認することができました。当ブログにて史料として提供しますので、興味がある読者の皆さん是非ご参照ください。
ただし解りにくい部分が多かったので、(小かっこ)の部分は説明を、〔きっこうかっこ〕の部分は捕捉をブログ主の判断で挿入しました。全54項は長文なので(文章の)区分けは琉球新報のそれに従って掲載します。最後に予備知識として、畠義基著『真相はこうだ』から人民党事件(昭和29年10月)当時の沖縄人民党と日本共産党との関係を掲載しておきます。
・昭和29年(1954年)8月31日 – 琉球新報朝刊より抜粋。
民政府情報敎育部長発表 – 琉球にも日共の”赤い牙” 人民党への秘密指令暴露さる
住民に抵抗を扇動し日米関係の切崩し図れ
琉球民政府情報敎育部長ディフェンダーファー氏は30日午前11時半4社記者団と会見し、人民党書記長瀬長亀次郎氏が日本共産党と気脈を相通じ彼が各地でやっている演説の内容は、この指令と符号していることが判明しているという重大な発表を行った。日本共産党が彼らにあたえた秘密指令書を琉球民政府G2がキャッチし、発表された指令の解説は詳細にわたるもので、本指令は琉球地区における共産党の方針並びに目的をうたったものである。この指令のもっとも重要な点は「機会あるごとに日米両国民間に成長しつつある友好関係を全力をつくして切り崩し米国人が反感を持つ事件を惹き起こし米国政府に対する沖縄人のレジスタンス(抵抗)をせん動する」「沖縄を日本の領土の一部であると宣伝せよそして米国人が日本から撤退する際米国人は又沖縄からも撤退するようにせよ」とこまごまな反米斗争(闘争)戦術を指令したものであり詳細はつぎのとおりである。
共産党書類の解説
つぎに掲載する記事はライカムG2でほん訳された、共産党の秘密書類の解説であって琉球地区に対する共産党の方針並びに目的を●ったものである。
1、米国は国連安全保障理事会における彼等〔米国〕の沖縄での法的地位の終審を封さし得るわれわれ〔共産主義者〕の実力が沖縄における彼等の法律上の地位の弱点となっている事を認め、奄美大島を日本に返還(1953/12/25)してその代償として沖縄を保持する事に対して日本の同意をえる(得る)と試みたのである。
2、それはてい国(帝国)主義的取り引きであり沖縄は未だに占領されて軍政下にあるのだと謂うことを宣伝せよ、必ず軍政府と呼び決して民政府といわぬようにせよ。
3、米国人は沖縄に居座る意図と見え公然と居座るのだと発表している、米国は朝鮮で休戦をわれわれ〔共産主義者〕から購って面目を失し、今では米国人の東洋に踏み止まる決意に対する東洋人の疑念について心を悩している。彼等〔米国人〕の朝鮮における地位がより不安なものとなったため彼等が日本と沖縄を保持する事は一層重要となった。これ等の島における彼等の地位の(を)不安なものにする事によって彼等を潰走させる事が出来るのである。米軍の基地が日本にあれば日本は戦争に捲き込まれるといって日本人を脅かせ。米国の沖縄保持は恒久だと民衆に確信させる事は米人にとって重要なことである、それで宣伝網を通じて、米軍の進駐は一時的だ短期間のことだとの信念を住民に植えつけよ、さすれば彼等〔米国人〕の協力者を失うこととなろう。
4、沖縄の基地は極東における米軍の前しょう(前哨)基地中の中枢をなすものである。
5、米国が沖縄を保持する限り、彼らの日本にたいする威力は強大なものである。沖縄を弱体化させよ、そうすればわれわれ〔共産主義者〕は日本を占領しえる。沖縄を米国の基地から除去せば、彼ら〔米国人〕はアジア大陸および日本にたいして権力を行使しえないであろう。
6、沖縄における米軍の駐留こそ日本共産党の破壊行為による政府乗取りの邪魔になっているのだ。
7、米国は琉球列島の保持にたいしては余程頑強であろうと予想される。
8、われわれ〔共産主義者〕の沖縄における活動により米人が警察手段を取ってわれわれ〔共産主義者〕の行動を抑圧するの止むなきに至らしめるようにせねばならない。そうする事によって彼等〔米国人〕がその島を使って日本およびアジアにおけるわれわれ〔共産主義者〕の行動を監視することが妨げられる。
9、米国が沖縄を確保する限り日本を内部から乗っ取るわれわれ〔共産主義者〕の努力は制約される。如何なる事情があろうとも決して米軍は無期限に沖縄に駐留するのだという事実の確立を許してはならぬ。彼等〔米国人〕が沖縄にいる限りわれわれ〔共産主義者〕が支配権を握る事は出来ないのだ、アメリカが沖縄を支配する事は彼等〔米国人〕がそこに軍隊を有していることによってのみ可能である。もし軍隊がいなかったら沖縄は彼等〔米国人〕に取っては無用なものである。
米軍が駐留する限り日本政府乗っ取りの邪魔
10、われわれ〔共産主義者〕の宣伝は「在沖米軍は住民を圧迫しりゃく奪(掠奪)し酷使して住民を野蛮な惨酷な方法で無一物の状態においている」ということを立証する事に力を注ぐべきである。以上の事を機会あるごとに繰り返し繰り返し述べる事、そして沖縄人として彼等が虐待されているという事(この文章は”そして沖縄人を彼等〔米国人〕が虐待している事”に訂正すると意味が通ずる)を根拠のあるなきに係らず確信せしむるように努めねばならない。
11、太平洋の島々を奪還せぬ限りわれわれ〔共産主義者〕がアジア大陸をせい服(征服)する自身は決して持てない。米軍は個々の島々で抵抗するであろう、彼ら〔米国人〕に対する住民の支持を不可能にし、機に乗じて住民をせん動(扇動)して彼らと対立させる事によって彼らの戦斗力(戦闘力)と資力を消耗させねばならない。
12、沖縄は軍事基地であるから軍司令官がいる。能う〔可能な〕限り彼の保安威力を削減せよ、そして沖縄はたゞの植民地であり住民の支持を受けておらないと主張せよ。米国は比嘉(秀平)主席を任命したが、見る所彼は任命してくれた政府に忠誠を尽すものと思われる。そして沖縄の無産階級はほとんど政府の眼中にないので彼らは売春を営むに至るのである。米政府によって任命された官吏や米政権の下で繁昌した商人等は米政府に忠誠を尽すものとして期待されている。沖縄住民が金持ちになるそのなり方が遅い事を強調して宣伝せよ、われわれ〔共産主義者〕がやがて支配権をは握(把握)するであろう立法院の自主権の拡張を更に求めねばならない。そして立法を通じて米政府に対抗して彼等〔米国人〕を苦境に立たせよ。民政官と立法院との凡ゆる対立を利用せよ、同志は多く立法院議員たらしめよ、そして常に政府に反対の立つ事とせ〔ね〕ばならぬ。
13、ロシア政府の下では目下米国政府より受けている給料より高い給料が支払われる。彼等の現在の給料は共産政府が支払うであろう給料にくらべたら奴隷賃金に過ぎないのだと住民に思い込ませることである。そしてわれわれに随う者は所有地を保有することである。もしロシア政府の支配下に入れば物価は安くなり課税は廃止され食糧は無償ですべての人々に与えられるし大地主連中は殺されるのだと住民に確信させるようにせねばならない。
米非難の機逃すな
14、沖縄を〔く〕さびとして米国人と日本人との間に意見の衝突と斗争(闘争)とを起させ、そして沖縄の独立運動を鼓舞してしょく民地(植民地)化しようとしたとして米国を非難せよ。ロシア政府の支配下では教育や文化は向上し且つ教職員は国家の優秀な宣伝家となれば昇進するものだと謂う考えを拡めるよう勉める。
15、米国人は嘗(か)つて、沖縄人を虐待したことがある。米国人の過去の経験を現在の沖縄人に対する米国人の香しい待遇振りの矛盾を指摘し、且つ過去における屈辱し(を)敢えて復讐するよう沖縄人を扇動せよ。このような方法で、われわれ〔共産主義者〕は彼等(沖縄人)を吾人の味方とすることが出来るのだ。
16、世界共産主義機構は米国が国際連合信託統治により沖縄における米国の地位を合法化することを断じて許容しない。この点につきわれわれ〔共産主義者、ここではソ連含む〕が拒否権を持っていることを忘れてはならない。このような次第で沖縄に対する日本の〔潜在〕主権と米国の保有の点で依然として沖縄が分離されている。この状態機会ある毎に利用でよ。
17、米国は軍事基地を保持せずして極東において自由を推し展(ひろ)げることは決してない。米国が軍事基地を獲得する度ごとに侵略と植民地との非難を彼〔米国〕に浴せかけねばならない。この様にしてわれわれは米合衆国をして太平洋地域並びに太平洋内にある全諸島および大陸を自発的に放棄させ得るのである。
18、沖縄駐屯の米側の諸理由はだ当(妥当)で、かつ極東の大部分の住民は充分理解している。併し米合衆国が沖縄人に対し非人道的野蛮的行為を為していると絶えず非難して極東の住民が米国の沖縄駐屯の事情を理解するのを妨げるようにせよ。
19、日本は66年間沖縄を統治した。米国は日本より撤退しようとしている。沖縄を日本の領土の一部であると宣伝せよ。そして米国人が日本から撤退する際、米国人は又沖縄からも撤退するようにせよ。米国人は沖縄人をあたかも奴隷の如く沖縄の島々に押し込め、沖縄人に米軍基地での労働を強制しており、彼等〔米国人〕の意図は共産主義てい国(帝国)の伸展に対するレジスタンスであるが、共産主義者による破壊行動の機会を与えるため、米国は沖縄人に対する一切の統治権を放棄すべきであると沖縄人に確信させるようにせよ。
20、機会ある毎に日米両国民間に生長(成長)しつつある友好関係を全力を尽して切り崩せ。米国人が反感を起す事件を惹き起して米国政府に対する沖縄人のレジスタンスをせん動(扇動)せよ、このようなすばらしく立派な例はすなわち一名の共産党公認候補を選出した沖縄共産党と社大党との連合であった。しかし米政府はその選挙を敢て無効にした(注:昭和28年4月の天願事件のこと)。そのような事に対する沖縄人の反感を出来る丈多くかもし出せ。
21、奄美大島の日本復帰後、米国は立法院を再編(昭和29年3月24日の第二回立法院選挙のこと。この時から小選挙区制が採用された)せざるを得なかった。それを解散命令(立法院の)ように見せかけ、且つ立法院にてわれわれ〔こここでは人民党〕が選良達が選挙無効に反対をとなえたことそれ(立法院解散)を結びつけよ。諸君は出来るだけ何時でも如何なる場所でも土地収用事件に対する大衆の反対をせん動(扇動)せよ、このすばらしい立派な一例をあげると即ち村民所有の土地に軍用道路の建設に反対するよう我々のせん動(扇動)者〔人民党〕が村民をせん動(扇動)した小禄村における最近の事件である(この案件は現在確認中)。貧民自身の所有でない財産(土地)に関する無断借地人の権利を行使し得る際はいつでも貧民の後おしをせよ。
22、共産主義労働組合を増すべきできるだけいつでもストを扇動せよ、彼ら〔労働者〕がわれわれの味方に加わることにより高い賃金を受けるよう見届け、猶(なお)その賃金は米国政府より支払われる。ストが成功裡に実施され高い賃金が与えさ(ら)れた際は何時でも自分らの手柄とせよ。われわれ〔人民党〕は立法院における労働法の通過に大勝利をかち得た(1953/07/24)。その結果われわれ〔人民党〕の支配下の労働組合を組織する無制限の機会にめぐまれている、もしわれわれ〔人民党〕の傘下にあるこれ等の労働組合が労働者に対する比較的に高い賃金の獲得に成功するならば全労働者はわれわれ〔共産主義者〕の支配下の労働者となる筈でそれによりわれわれ〔共産主義者〕は沖縄に軍隊を組織して抵抗し、主権を取る基礎がわれわれに出来る訳だ。
23、機会ある毎に復帰運動を後援せよ。米国人は復帰問題に関してびくびくしている。米国人を十分におどせ(脅せ)。米国が日本に奄美大島を返したことを非難せよ。猶(なお)吉田(首相)を売国奴としてやっつけよ。しかし奄美大島ならびに沖縄の日本復帰を千島列島並に樺太の日本復帰と如何なる点でも結び付けてはならない。占領地の返還問題に決してソビエツト(ソビエト)てい国(帝国)を引きづり込んではならない。
24、われら共産主義者は復帰運動を未だ全般的に支配しておらぬ。復帰運動の現在の指導者らはわれわれ〔共産主義者〕の命令に服さない。指導者の中の幾人から実は反共主義者である。
25、沖縄人指導者の幾人かは実は共産主義者を差別待遇しており、且つ彼らは警察および諜報機関と協力してわれわれ〔共産主義者〕を非常に悩ましている。
26、米合衆国民はMSA協定により日本国民に共産せい服(征服)に対する軍事的抵抗を一層可能にしようとしている。なおこれは沖縄における米軍の駐留とは密接な関連を有している。沖縄における選挙区の最近の再編は共産主義者による政治的せい服(征服)の希望を減ずるためである。
27、沖縄における共産主義者提唱の復帰運動は奄美大島における共産主義者の諸活動と密接な関係を維持することにより大いに助成されるところがある。
28、日本政府は奄美大島の住民を満足させておくために未だ十分履行して居らぬ空の約束をさせるを得なかった。日本政府側のかような不履行を繰り返し指摘し奄美大島住民をせん動し続けよ。明らかに吉田(首相)は米合衆国との取り引きをどこまでも忠実に守るものの様だ。吉田は忠実に日本の行政を奄美大島に施(し)いた。そしてわれわれの党員がその政府の職に就くことを許さなかった。彼は明らかにわれわれ〔共産主義者〕の勢力が奄美から沖縄に拡大するのを援助しない意向だ。
合法的に動き首を出すな。
29、奄美大島におけるわれわれ〔共産主義者〕の諸活動と沖縄におけるそれと密接な関連を維持する必要がある。もし諸君が沖縄の軍事基地に対する斗争(闘争)に成功するならば西太平洋における米国合衆国の軍事力をマヒ状態化することになる。しかし今、諸君の首を突き出すな。合法的活動にだけどとめておけ。もし諸君が非合法活動を敢てためしたら我々〔共産主義者〕は諸君を擁護するに足る十分な力を有しておらぬ。単に合法的ルートを踏んで軍事基地建設に反対せよ、しかしそれ以上余計な事をするな。諸君の諸活動を奄美大島並びに日本に於ける共産主義活動と密接に結び付けよ。(つづく)
コメント
Comments are closed.