今回は阿麻和利の謎の番外編として、おもろさうしに掲載されているりうきう天地開闢のオモロについてブログ主なりに解説します。というのも古りうきうの神観を伺うにはこのオモロは格好の史料だと確信しているからです。ただし非常に長く、わかりにくいオモロでもありますので、今回は大意と解説を先に、そしてオモロ本文は最後に掲載しますのでご了承ください。
おもろさうし巻10「ありきゑとのおもろ御さうし」に「むかし、はちまりや…」から始まる長いオモロがありますが、鳥越先生の解説からまとめると、大意は「むかしのはじまり、日神は美しく照っていらっしゃって、下界を御覧になられたところ、(りうきうの)祖神である「あまみきょ」を呼び出し国を造れと命ぜられた。日神は国が出来上がるまで待ちきれないほどの期待をされ、そしてそこに住む者は神ではなく人間をつくるようよう命じた」になります。
「中山世鑑」や「球陽」などに記載されている神話とは若干様相が異なりますが、通説のりうきう神話との違いを2~3取り上げてみると、
1.おもろさうしにはブログ主がチェックした限り、「陰陽の和合」という発想が皆無ですが、それを証明しているかのように、神の性別が判断できません。ちなみにWikipedia にはあまみきょを女神、しねりきょを男神と記載されていましたが、それはおそらく後世の観念であり、おもろさうしからは神の性別は断定できないのです。
※りうきうの祖神であるあまみきょ(?amamicuu:ア゛マミチュ~)は “海の向こうから来た人” の意で、しねりきょ(siniricuu:シニイチュ~)はあまみきょの対語で “稲穂をもたらした人” の意です。なので「あまみきょしねりきょ」と表記された場合は、男女二柱の意味ではなく、「海の向こうからやって来た稲穂をもたらした人」の解釈が正しいです。なお「人」と記していますが、もちろん神の血筋をひく者の意が含まれます。
2.このオモロはあまみきょに国を造れ、そこには神の血筋を引くものではなく、人間を住まわせよと命じていますが、では「だれが社会を治めるのか」の重要なテーマがごっそり抜けています。巷に伝わる長男が王、二男が按司、三男が百姓と言った俗っぽい話はなく、りうきうの地が誰によって創られたかについて唄われたに過ぎないのです。
3.そしてこのオモロには「天降り」という発想がありません。なので「地上を治めるために神の血筋を引くものが天から降臨した」という観念は、りうきう土着の思想ではなく、外部からもたらされた可能性が否定できないのです。
いかがでしょうか。このオモロは祭式の際に唱えられたと考えられていますが、社会階層が未分化の状態だった古代社会の様相が伺える貴重な史料とも言えます。ではどこから「天降り」の観念が伝わったかは今後の宿題にしておいて、りうきう天地開闢のオモロ(巻10の2)の全文を紹介します。読者の皆さん、是非ご参照ください。
(十ノ二)
一 昔、初まりや、てだ子、大主は、清らや、照り御座され、
又 偲び、初まりに、(一節二行目から折返、以下同じ)
又 てだ、一陸(いちろく)が、
又 てだ、八陸(はちろく)が、
又 御去りして見居れば、
又 去り善くして見居れば、
又 あまみきょとば寄せわして、
又 しねりきょをば寄せわして、
又 島造れとて、わして、
又 国造れとて、わして、
又 ここだくの島々、
又 ここだくの国々
又 島造る極みも、
又 国造らん極みも、
又 てだ子、うら霧りて、
又 偲び、うら霧りて、
又 あま海や、筋や、成すな。
又 稲(しね)や、筋や、成すな。
又 娑婆、筋や、成し御座されい。
【解釈】①②むかしのはじまりよ、日の大神は美しく照っていらっしゃって、③④日神が、……⑤⑥遠く離れて、下界を御覧になっておられたところ、……⑦⑧祖神をばお呼びつけなされて、……⑨⑩国を造れよ、と申されて、……⑪⑫たくさんの国々を、……⑬⑭国をつくられるまでも、……⑮⑯日神は心待ち切れなくて、……⑰⑱天界の血筋の者をつくるな。……⑲人間界の血筋の者をつくれよ(と申されて)、……