代執行の実施と “二重思考”

すでにご存じの読者もいらっしゃるかと思われますが、普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、斉藤国交省は(今月)28日、防衛相による地盤改良工事のための設計変更申請を沖縄県に変わって承認する「代執行」を実施しました。新聞報道によると、地方自治法に基づき国が自治体の事務を代執行したのは初めてとのことで、結果的に我がりうきう・沖縄の歴史に新たな “黒歴史” が刻まれることになりました。

ちなみにこの案件について、ブログ主は9月のタイミングで県が「承認」すると予想してましたが、現実には「判断を示さず」から「不承認」の流れですすみ、今日の国交省による代執行の実施に至りました。つまり「民意」を盾に司法判断に従わなかった形になりましたが、改めてチェックすると今回の案件は典型的な「二重思考」の行動様式であることに気が付いたので、この点について説明します。

念のため、再度言及しておきますが、二重思考とは「(同一人物が)相異なる思想信条を持ち、両方とも正しいと信じる行動様式」を意味します。ちなみに二重思考と区別するため、当ブログにて二重規範は「社会には複数のルールがあり、同一の出来事であっても社会階級ごとに適用されるルールが違う」と定義しておきます。

今回の代執行案件で一番目を引いたは、県庁サイドが「民意」を盾に司法判断を受け入れなかったことと、法に則って県政を運営することの両方を正しいと思っている件です。参考までに10月11日付沖縄タイムス2面に掲載された記事全文を紹介します。

最高裁判決「従わなかった事例ない」/ 辺野古の県対応 照屋守之氏批判

10日の県議会一般質問で照屋守之氏(無所属)は、辺野古新基地の設計変更承認を巡り、国の「是正の指示」は適法とする最高裁判決後も承認しない県の対応を批判した。

「判決に従うべきだ」とし、最高裁判決に従わなかった事例があるかと質問。宮城力総務部長は「確認できる範囲では、最高裁判決に従わなかった事例はない」と答弁した。

県が判決に従わないことによる県職員の業務への影響について、玉城デニー知事は「職員の皆さんには順法の精神で職務に当たっていただきたい。私は県民に選ばれた政治家として、判断に責任がある。深く熟慮したい」と述べた。

以前、二重思考はヒトの生存本能に基づく思考回路であり、誰もが抱えている行動様式であると言及しました。ただし、この思考の欠点は自分だけが生き残るために複数の思想信条を使い分けることを繰り返すあまり、他者の立場を理解できなくなる、つまり

共感能力が欠如してしまう点につきます。

しかも、この手の輩に限ってやたらと「話し合い」を持ちかけてくるから実に質が悪いのです。

※ちなみに県は司法判断に不満を表明し、国に「話し合い」を求めていますが、その一方で司法ルールに則り「最高裁に上告」するとも宣言しています。それはつまり、司法は県の主張に耳を傾けてくれないので国と直接「話し合う」ことと、司法ルールにのっとり上告することの両方の選択が正しいと思っての行動なのです。もちろん国がこんな身勝手を相手にする必要はどこにもありません。

我が沖縄では、鳩山政権の不手際により普天間問題が拗れたことに伴い、辺野古移設反対を掲げた政治勢力が沖縄県政を担って10年弱、

気が付いたら当たり前のように二重思考で県政が運営され、かつマスコミがこれに加担する

との構図が確立しています。実はこの点が現代の沖縄社会における “最大欠点” なんですが、残念なことにこれは「民主主義の失敗」として割り切るしかありません。近代デモクラシーの本性は「衆愚」であることを証明したとも言えますが、今回の案件は「二重思考で政治を運営する危険性」を明示した点だけは評価してあげたいと思いつつ、今回の記事を終えます。