既にご存じの読者もいらっしゃるかと思われますが、普天間基地の辺野古移設に伴う工事を巡り、軟弱地盤改良工事の設計変更申請を「承認」するよう国交省大臣が県に求めた「勧告」について、玉城デニー知事が期限内の〔9月〕27日までに「判断困難」を理由に承認の是非については判断せず、引き続き検討する考えを示しました。
なお、国の承認「指示」の期限が10月4日のため、知事は3日に「承認」か「不承認」かの判断を下すようですが、今回は知事の判断を困難にしている「民意」について言及します。
ご存じの通り、玉城知事を「判断困難」に追い込んだ最大の理由は、彼が「辺野古新基地反対」を旗印に2度の県知事選で勝利した事実です。そのため、最高裁判断に従って工事を「承認」すると、その時点で彼は支持者から「公約違反」のレッテルを貼られてしまいます。
しかも、平成31年(2019)2月24日に行われた「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票(以下県民投票)」の結果も、知事の判断を強く縛っている状態になっています。
ただし、ここで見落としがちなのが、現代社会における「民意」は法によって定められている点です。具体的には県知事選も県民投票も法に則って実施されて、「民意」が確定してます。ではなぜそんな形式ばったことをするかと言うと、そうしないと「われの意見すなわち民意」とぬかす輩が大量発生してしまい、社会秩序の維持が困難になってしまうからです。
ちなみに、今回のように「最高裁の判断」と「民意」が衝突した場合はどうなるのでしょうか。その場合、政治家ならば「最高裁の判断」を優先させます。よくよく考えてみれば当たり前のことで、法によって確定した「民意」を理由に、法的義務を拒否することなんてできないからです。
それが分からない支持者に囲まれているから玉城知事はものすごく困っているのです。
なので、おそらく県知事サイドは「不承認を貫いても違法ではない」との理論を固めるために、「判断困難」とのよくわからない理由で先送りをしたと思われます。
もしも翁長雄志氏が健在なら、彼は生粋の政治家なので迷うことなく「承認」を選択したでしょう。ただし現実の知事は玉城デニー氏です。残念ながら彼が不承認を貫いた場合、その時点で
彼の政治家としての賞味期限は切れた
ことを意味します。辺野古新基地建設反対の活動家にとっては歓迎すべきかもしれませんが、県民全体からすると賞味期限切れの政治家にあと3年近く付き合わざるを得ないのは不幸極まりない状態になると警告して今回の記事を終えます。