自衛隊配備ハンタイの黄昏

今月はWBCに始まり、春のセンバツ、そして春季高校野球大会(沖縄)と野球イベントが続く影響もあって、当運営ブログも事実上のお休み状態でしたが、(野球イベントが落ち着いてきたので)今回はひさびさに真面目なコラムをアップします。

今月、石垣島に陸上自衛隊が初めて配備される件に関し、我が沖縄では「駐屯ハンタイ」の声が上がっていますが、復帰直後の沖縄本島への自衛隊配備に対する猛烈な反発に比べると、極めて静かな状態に見受けられます。

というのも、南西諸島への自衛隊配備は、”台湾有事” に備える名目で実施されたため、我が国における中国大陸の政権(中国共産党)に対する不信感を背景に、沖縄県民に広く支持されているのが実情かと思われます。

ここで、中国共産党に対する不信感について言及すると、中国革命(1949)以降、共産党が党是として「一つの中国」を掲げ、その実現のためには武力行使も辞さない姿勢を堅持しているからです。確かに、他国政党の党是に対して、外国の第三者があれこれ口出す権利はありませんが、だからといって実際に武力を行使すると、東アジアに重大な軍事的脅威が発生することになります。

もちろん、台湾は中国共産党の党是なんて受け入れることはできません。日本も米国も東アジアにこれ以上の軍事的脅威が発生することは容認できないため、現在の国境線を維持するべく、軍事および外交を展開せざるを得ません。大雑把に説明しましたが、これが現在の東アジアにおけるパワーバランスの正体なのです。

つまり、南西諸島の自衛隊配備も “現在のパワーバランスの維持の範囲内” で実施されているわけであり、ハンタイ派が主張する「自衛隊を配備することで相手から攻めてくる」ことは、現実にはありえないと断言できます。

※中国共産党も、東アジアにおけるパワーバランスを黙認している状態のため、南西諸島に基地を配備した理由だけで、東アジアの脅威を増大させる軍事・外交力を行使する可能性はきわめて低いです。なぜなら日米が強すぎて、中国単独の力では勝てない「現実」を直視しているからです。

むしろ、無防備のほうが危険極まりない状態になるのです。仮に日米が我が沖縄から軍事力を完全撤退した状態を考えると、(このような仮定はバカらしいとのツッコミはおいといて)沖縄は軍事的空白になるため、東アジアのパワーバランスが大きく崩れる恐れがあります。

そのため、台湾は自国防衛のために沖縄諸島を占領せざるを得ない状況に追い込まれます。というのも、沖縄が中国共産党の支配下に置かれた場合、中国海軍は太平洋への自由航海が可能となるため、台湾の国防上重大な脅威が発生してしまうからです。

にもかかわらず、我が沖縄では「基地が配備されることで沖縄が脅威に晒される。東アジアの軍事緊張は話し合いで解決すべきだ」と唱える輩が跡を絶ちません。しかも、彼らは中国共産党と台湾の間の “確執” が話し合いでは解決できないことすら理解できないようです。

それはつまり、我が沖縄の反戦平和活動の目的が、平和の実現ではなく、

「基地が配備されることで沖縄が脅威に晒される」との命題を主張する

ことへ変質してしまったからなのです。つまり運動そのものが “堕落” したことを意味しますが、しかも質の悪いことに活動家たちがこの点に全く気が付いていないのです。そして彼らの “堕落” が我が沖縄社会における “最大のガン” になっている事実は直視する必要があります。

ただし、平和活動家が如何に「ハンタイ」を唱えても、東アジアのパワーバランスを維持する日米の外交努力には全く影響を及ぼしません。そして中国共産党も、主張それ自体が活動目的に堕してしまった輩を相手にする暇はありません。彼らは現在進行形で沖縄社会からフェードアウトしている事実にどこまで耐えられるか、ブログ主は外部から生暖かく見守る決意を固めつつ、今回の記事を終えます。