【県都の決戦】あいろむが斬る(中) 自壊

「私は歩んでいく」との力強く叫びながら、選挙カーで那覇市内を遊説する翁長雄治候補とその陣営。だがしかし、内部は決して一枚岩とは言えず、翁長家の支援と玉城デニー知事の知名度頼りで選挙戦を進めて行く手法に運動員たちは不安を覚えたという…

などと、沖縄二紙の選挙特集記事の出だしっぽく始まった “あいろむが斬る” の第二回目は、那覇市長選の結果がオール沖縄に与えた致命的なダメージについてブログ主なりに言及します。

今回の記事をまとめる上で、ブログ主は沖縄県知事選を含めて膨大な関連記事を写本しましたが、そのなかでも印象に残ったのが選挙後の共産党のコメントです。9月13日付沖縄タイムス2面に掲載された県知事選に関するコメントと、10月24日付琉球新報2面に掲載されていたコメントを比較すると極めて興味深いので全文をアップします。まずは県知事選に対するコメントから紹介します。

知事選 県関係国会議員コメント

民意無視に抗議 赤嶺政賢衆院議員(共産)

県民の民意を無視して知事選や参院選に介入してきた政府への抗議の審判を下した。これ以上の暴走は、地方自治の法治国家としてのあるべき姿も破壊し、絶対に許されない。

共産党らしい力強いコメントですが、言いたいことはただ一つ “民意に従え” であり、その民意とは “辺野古新基地建設反対” を指すのは言うまでもありまません。その他オール沖縄選出の国会議員さんも同様なコメントを残しています。

次に令和04年10月24日付琉球新報に掲載された、那覇市長選に関する共産党県委員会のコメントです。

県内政党・会派コメント

県民は屈しない‐共産党県委

辺野古新基地反対の民意は揺るがない。政府のいかなる攻撃もはねかえし新基地建設の断念を求めていく。オール沖縄をさらに発展させていく、新たなたたかいのスタートだ。県民は屈しない。

上記コメントは共産党が選挙で “大敗” したときのテンプレそのものですが、那覇市長選の結果に関して共産党として言いたいことは、“選挙結果は認めるが、選挙で示された民意は受け入れがたい” ということで間違いないでしょう。選挙で勝利すると「民意に従え」、負けると「受け入れられない」との意思表示を示すあたり、共産党の伝統芸能は健在だなと実感したブログ主でありますが、では共産党が受け入れられない那覇市長選で示された “民意” とは何かが気になるところであります。

回答のヒントは同月14日付琉球新報に掲載された城間幹子市長のインタビュー記事で、試しに全文を掲載します。

「何が裏切りか逆に聞きたい」城間氏一問一答

那覇市長選で知念覚氏の支持を表明した城間幹子市長と報道陣との主なやり取りは次の通り。

どういった思いでここに来たのか。

「知念さんに『翁長雄志さんも喜んでるよ』って言ったら『そうだね』ってお互いウルッときた。翁長さんがオール沖縄を形成し出発したあの時に戻りたい。(知念氏の出馬会見で)浦崎唯昭元副知事らが並んだ映像を見て翁長さんが出発した面々だと思った」

‐知念氏を支持する理由は。

「8年間、一緒に市政運営をしてきた責任を取ると言うとふさわしい表現か分からないが、それだけの信頼感があった。私が種をまいた事業をスムーズに進めてくれると期待した。揺れ動く時期もあったが、最終的な決め手はこの二つだ」

‐オール沖縄側からは裏切ったと見られる可能性もあるのでは。

「そういう言葉を聞いたら、何を裏切ったのかと逆に聞いてみたい。翁長さんからバトンを受け継いで2期8年、市政を発展させた。それが私のやるべきことだった。恩返しができたんじゃないか」

‐今のオール沖縄は左に寄り過ぎて仕切り直しが必要ということか。

「その通りだ」

‐自身の辺野古新基地建設反対の姿勢は変わらないか・

「はい」

記事を読めばお分かりのとおり、那覇市長選における知念候補の大勝によって、

1,城間幹子市長は裏切り者ではない。

2,オール沖縄は変質してしまった。

3,知念覚氏は、那覇市政における翁長雄志氏の政党後継者であり、「腹六分八分」のオール沖縄の精神で保守中道をまとめ上げ、那覇市政を運営していく人物である。

との “民意” が示された訳で、たしかに共産党沖縄県連をはじめオール沖縄がが絶対に認めることのできない内容と言えます。

那覇市長選におけるオール沖縄の大敗の原因について、この点に関してはすでにマスコミ等で報じられている通り、候補者選定の段階で “辺野古新基地建設反対” に固執したあまり、知念覚氏というかけがえのない人材の擁立に失敗しただけでなく、彼を自公側に誘導してしまい、しかも城間幹子市長まで敵に回すおまけがついてしまったことで間違いないでしょう。

とどめはオール沖縄が擁立した人物がよりによって翁長雄志氏の遺産のなかでも “不良資産” で名高い雄治氏です。ハッキリいって那覇市民もバカではありません。

優良資産と不良資産が対決したら、優良が勝つに決まってます。

その結果、那覇市民からオール沖縄に対して最も好ましくない “民意” が突き付けられた訳です。

最後に、現場取材の記者たちもオール沖縄のやり方にあきれ果てたのでしょうか。同月14日の琉球新報2面の題字は秀逸です(終わり)