コンプライアンス遵守と公益性

今月17日の AERAdot. と毎日新聞の報道に端を発したワクチン大規模摂取東京センター予約システムに関する検証記事について、ネット上では様々な意見が飛び交っています。大雑把にまとめてみると、

システムの欠陥を指摘した毎日、AERAdot. の記事を高く評価するタイプと取材の違法性を問題にするタイプの2つに分類できます。ちなみにこの案件に関してブログ主は猫組長のツイートが腑に落ちたので全文を紹介します。

虚偽の予約ができてしまうシステムを用意した側は過失で、虚偽の予約を実行した側は故意であるという事実は揺るがない。

つまり取材における “虚偽の予約” という行為をどのように捉えるかで評価が分かれるわけで、参考までに猫組長は今回の取材方法は不正行為と厳しく批判しています。

それに対する毎日新聞社の見解が極めて興味深いのですが、同月18日(20時27分)の電子版によると、

毎日新聞は17日、予約システムについて「架空の数字を入力しても予約できる」との情報を得た。防衛省はシステムのそうした欠陥について事前に公表しておらず、事実であれば放置することで接種に影響が出る恐れもあり、公益性の高さから報道する必要があると判断。防衛省への取材を進めるとともに、記者が実際に入力して事実であることを確認した。

とあり、取材の適法性については全く言及していません。この発言は、公益性が高いと判断すれば取材過程の適法性は問わないと公言しているのと同様であり、意地悪く解釈すると、

コンプライアンス遵守の精神では公益性が高い記事を提供できません

と全世界に喧伝しているようなものです。

コンプライアンス遵守とは?

コンプライアンス遵守は法律を守ることが大前提ですが、企業に求められるのは企業倫理や社会的良識、社会規範などを守っているかどうかということです。つまり法律で懲罰を課せられていない項目であっても、法律の抜け穴をかいくぐるような行為は避けなければなりません。

引用:法律を守ること?今さら聞けないコンプライアンス遵守とは

今回の事件は個人や団体(企業や政党など)のコンプライアンスに対するセンスを判断する格好の材料であり、具体的には AERAdot. と毎日新聞の報道を高く評価する人たちは現代日本の社会秩序に対して強い不満を抱いていると判断しても間違いなさそうです。そしてこの案件で一番質が悪いのが “ザルシステムを作った方に問題がある” と主張する輩で、つまり制度のスキマを利用して機会を得、そのことを指摘すると相手の非を責めるという考え方が、

反社会勢力と同じ発想であると気が付いていない

気の毒な人たちが一部実在してることです。

我が沖縄では昨年9月に制度の抜け穴を利用した持続化給付金の不正受給の事件があり、沖縄タイムス社では該当の従業員を懲戒解雇する異例の事態となりました。その際に社内におけるコンプライアンス遵守の欠如が問題視されたわけで、同社では再発防止に取り組んでいる最中でもあります。それゆえに今回の案件で

“朝日新聞出版と毎日新聞には「厳重に抗議」ではなく「丁重に御礼」するのが筋だ”

とコンプライアンス遵守の欠如を公言する社員がいないことを願いつつ、今回の記事を終えます。