琉球・沖縄の歴史の個人的な謎 近代にいたるまで女性が文字を読めなかったこと 番外編その6

カーバ神殿

ここでちょっと話が飛びますが、世界の歴史における三大宗教(キリスト教、イスラム教、仏教)において、呪術的思考の排除に成功した宗教はイスラム教だけです。ではイスラム教がどのようにして呪術を克服したのを考えてみましょう。

イスラム教とキリスト教は一神教かつ偶像崇拝を禁止します。この点は共通ですがイスラム教は偶像崇拝を厳禁します。その徹底ぶりは礼拝所にアッラーや預言者ムハンマドの肖像が一つもないことでも分かります。偶像崇拝の禁止を徹底化させることで、呪術的思考の排除に成功しますが、布教から1300年を経てもその精神が継続されていることには驚きを禁じえません。

キリスト教の場合は、いつの間にか呪術的思考が侵入してしまいます。たとえば7つの秘跡(洗礼、堅信、聖体、ゆるし、病者の塗油、叙階、結婚)はキリスト者でないブログ主から見ると呪術にしか見えません。第一イエス・キリストの肖像も本人かどうか分かりませんし、キリスト像の前で一心不乱に礼拝する姿は偶像崇拝そのものです。その行為に対してイスラム教徒が猛烈に非難するのも当然なのです。

原始仏教にも呪術的思考はありません。ただし日本に導入されたときはすでにどっぷり呪術の世界に染まった状態でした。仏像拝んでご利益の精神は呪術そのものですし、日本人大好きの般若心経を何回も何回も写経すれば功徳があるなんて呪術的思考以外何物でもありません。本来の仏教は呪術的行為には無関心です。

イスラム教が呪術的思考を克服した*のはその教義が明快であったことが最大の理由です。キリスト教の予定調和説や三位一体説のような意味不明な理論を教義から排除したのが特徴です。仏教のようにべらぼうに長い修行期間も設けていません。神が提示した教義を順守すれば最後の審判で天国ルート確定ですので、こんな楽なことはありません。現世の利益を得るのではなく死後の利益に特化しているのもポイントです。

*イスラムの歴史においても例外的に呪術的な存在があります。聖人ヒズルに対する信仰で、航海に対するご利益があると信じられてきました。

それとイスラム教には女性の法学者が存在していたことも呪術的思考の排除に成功した理由と思われます。イスラム教は早い段階から女性の法学者が存在して、地域の礼拝所で活動しています。彼女ら法学者は女性大衆にとっては良き相談相手になります。我が沖縄県において学問ある女性が地域住民の相談相手になるのは1920年代に入ってからですので、イスラム教の先進性には本当に驚くばかりです。

イスラム教において、教義が単純明快で、男性だけではなく女性にも活動の場を保障したことが呪術的思考の排除に成功した要因と考えると、琉球・沖縄の歴史において琉球王国の時代に呪術の世界にどっぷりはまってしまった理由がよくわかります。すべての女性たちが文字を知らず学問の世界から遠ざけられた結果、呪術的思考の克服ができなかった点にユタを目の敵にしていた当時の為政者たちが最後まで気づかなかったのです。(続く)

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