“スキダァヨー、スキダァヨー
はァとが燃エルンダ…… “
— がなりたれるようなジュークボックス。”旭のツイスト” にのって投げつけるようなツイスト・ダンス。幾組もの男女 — といっても中学生か高校生ぐらいの “黒い芽” たちだが、文字通り “無我” の表情で足をはね上げ、腰をふり、手をバタつかせる。笑いと奇声がキンキン耳をつんざいて、すさまじい狂乱のムードである。
踊りつかれ、もつれあいながらくたばる。そこをすかさず旗手交代「K子、こんどはオレだ」「オッケー、誰かボックスかけてヨー」…… 。
— 深夜喫茶 “M” 。夜なかの1時ごろの光景である。露骨ないん語などを目茶苦茶にぶちまけてとんとごきげん。むしろ、はやしたてるような勢いで、高笑いと奇声が渦巻く…… 。
これが “黒い芽” たちの典型的なグループ遊びである。”部外者” が入っていくと、一瞬取り締まりのデカ(刑事)ではないかとさっと警戒するが、そうでないとわかると再び傍若無人。おそれ入って “部外者” が逃げ出したくなるほどで、喫茶店はグループの独占たまり場だ。
深夜喫茶を独占 / ツイストで乱痴気騒ぎ
一目で町のチンピラとわかるマンボズボン、赤シャツ、学生服の非行少年たち7~8人。いくら警察が取り締まっても、パトロールのスキをぬってぞろぞろとグループが寄り集まってきて、かくのごとき乱痴気さわぎを演じる。常識を通りこした少年少女の無軌道さだけがそこにはあった。
経営主側も手放しで、喫茶店をそのまま非行グループの “楽園” にさせている状態。数回、「青少年に飲酒、喫煙の場を供したり、酒類を販売……」との風俗営業法違反で取り締まりにひっかかったこともあるが、このごろではたくみに法の目をくぐっているという。こうした非行少年の “楽園” が、那覇市内だけでも5~6カ所、警察のリストにのぼっている。なかには、喫茶店の奥部屋を明け渡し、桃色遊戯の場に提供、何かしらの “お礼” を受けとっているのもいるといわれる。
× ×
2月のはじめ、このたまり場 “M” で非行のさい中取り締まりの少年係刑事にしょっぴかれた少女たちがあった。自称 “少女夜のちょう” のズベ公グループで、いずれも15歳の、本当は中学3年生。桃色遊戯、深夜徘徊などで警察にしょっちゅうひっぱられてくるフダつきのグループ、係り刑事らの「また来たのか」に「ヨロシクネ」とケロリとしているのもいるしまつだ。
グループの1人、S子と係り刑事の型どうりの問答 – 。
「”M” 喫茶店にはいつごろから出入りするようになった」
「半年ぐらい前…」
「誰にさそわれて?」
「……」
「いつ家出したのか」
「こないだヨ」
「どうして?」
「つまんないからサ」
「学校にはどうして行かない?」
「アソんだ方がおもしろいサ」
「アソんでばかりいて大人になったら後悔するぞ」
「平気サ。なるようにしかならないじゃない」
もうひとりT子の供述調書 – 。
「学校も行かなくちゃならないと思います。それに高校にも受験しなくちゃならないので遊んでばかりいたら困ると思うんです。でも、何となく “M”(前述の喫茶店)の友だちのことが気になって… “M” で遊んでいると楽しいし、また友だちとエンを切ろうとしても自分の思どおりいかないから困るんです……」
さらに、グループのリーダー格でもあるY子などは、したたか者、暴力団の一味とグルになったりして遊びまわるという。
「ウチのうしろにゃ、暴力団の××派がついてんだからね。紹介してやろうか。ウチのコレ(と親指出して)はすごくイカすんだから…」などとグループにふきまくって得意がるしまつ。警察もこの少女らが暴力団と結びついている事実に最初はびっくりしたというが、アクションが売りもののチンピラやくざ映画を地で行った “黒い罠” がこの少女たちを包んでいる。「オレのスケ(情婦)だ」
「あたいのヒモ(情夫)よ」
とためらわない関係ができて、それがそのまま “暴力” に結びついていく場合が多い。「オレのスケに手を出した」と集団リンチにまで発展する。
このズベ公グループといっしょの非行少年らも那覇派とかコザ派などの “中央暴力団” となるとそのまま尊敬し、一味に加えてもらいたいばっかりに受験勉強よろしく非行歴をどんどん重ね、ハク」づけにいっしょうけんめいのありさまだという。単なる非行グループから “プロ暴力団” へのレールはそのまま通じている。(昭和38年2月21日付琉球新報7面)