計算高いとは彼女のような立ち振る舞いを言う

本日(11月12日)、琉球新報の女性識者によるコラム「日曜の風」に香山リカさんの投稿が掲載されていました。相変らずの香ばしい内容で、当ブログでも過去に室井佑月さんの投稿を2度取り上げたのですが、今回はちょっとおもしろいことに気がつきました。まずは全文をご参照ください。

1112日 ゆがんだ国くっきり トランプ氏来日 香山リカ

トランプ大統領が来日した。とはいっても、滞在したのは東京だけだ。しかも、日本到着は横田基地で、移動のヘリコプターの離発着に使われたのは、東京・港区の米軍ヘリポートだ。いずれも米軍の排他的管理区域であり、トランプ大統領は「日本にある米軍基地を来訪した」と言ってもよいかもしれない。オバマ大統領が初来日したときのような公開演説会もなくもっぱら安倍総理が相手を務め、市民とのふれ合いは皆無であった。

日本を訪れる前に立ち寄ったハワイでトランプ大統領は真珠湾を訪れ、「リメンバー・パールハーバー」とSNSに投稿した。言うまでもないがこれは第二次世界大戦の日本の先制攻撃に対し、アメリカが「不意打ちだ」と怒りを表明するときに使われたフレーズだ。そして日米首脳会談のあとの記者会見では「日本は米国からの兵器を大量に購入すべき」とはっきり口にし、安倍総理もそれに同意した。

驚いたのは、ここまであからさまに「日本はいまも実質的には米軍の管理下にあるアメリカの属国なのだ」と見せつけられたのにテレビの情報番組は歓迎ムード一色で、「何を食べたか」「夫人のファッションは」といった話題を連日、大きく取り上げていた。

安倍総理は、トランプ大統領に「わが国の国民である沖縄県民の多くは米軍基地に反対しています」と伝えたのだろうか。「全国で多くの人々が軍事力拡大には警戒しています」と伝えただろうか。おそらくその反対で、大統領が喜びそうなことばかりを口にしたのではないか。

アメリカへの隷属が続く日本。沖縄県民を無視する日本の総理。それに異議も申立てず、逆に喜んで受け入れているメディア。トランプ大統領の来日は、そんなゆがんだ構図をくっきりと浮かび上がらせた。滞在の間の交通規制で迂回を余儀なくされながら、「沖縄の人たちの怒りはこの何万倍か」と思うことしかできない私は、無力感を覚えるばかりであった。

香山さんのコラムの特徴は、相手が何を期待しているかを正確に読み取って、その意を汲んだ内容で纏めた文章構成になっていることです。この点が室井佑月さんや谷口真由美さんの投稿との大きな違いです。だから、このコラムは彼女の持論というよりも、琉球新報の本音を香山さんなりにまとめて公開したといっても過言ではありません。

香山さんは、①自分の社会的な立場がどこにあるか、②その立場を守るために誰が味方なのか、③その味方を喜ばすためにはどのように振る舞えばいいのか、を極めて正確に把握しています。だから彼女のアンチがどんなに騒ごうとも、ネット上で炎上しようとも実はあまり気にしていないのかもしれません。香山さんが恐れているのはただ1つ、自分が味方だと思っている勢力から見捨てられることだけです。

意地悪く言えば“計算高い女”になりましょうが、ブログ主は決して悪いとは思っていません。もしかすると10年後ぐらいに旧革新陣営の社会的勢力が激減したら、あっさり保守系に鞍替えしてもおかしくありませんし、そして『私が見たサヨク運動の実体および懺悔録』なんてタイトルの回顧録を発刊するかもしれません。

実は琉球・沖縄の歴史上で、①自分の社会的な立場がどこにあるか、②その立場を守るために誰が味方なのか、③その味方を喜ばすためにはどのように振る舞えばいいのか、を正確に把握して実践した人物の1人が意外かもしれませんが瀬長亀次郎さんです。時代によって頼もしい味方をつけて上手に立ち振る舞った瀬長さんの生き方はブログ主には大変興味深いものがありますが、この点については後日改めて記事にする予定です。(終わり)