笑いの神

前回、小渡三郎兄弟のやらかし記事 “カーハガリンドウ” をアップしましたが、今回はその続編で同事件を琉球新報がどのように報道したかを紹介します。

少し話がそれますが、新型コロナウィルスが県内で再び蔓延している状況のため、しばらくは散策やグルメレポートは控えて “積み史料” 中心に記事を作成しますのでご了承ください。では小渡兄弟のやらかしの第一報記事をご参照ください。

【コザ】十日深夜、コザ市の通称中の町のバー街で現職の県会議員兄弟と警官が酒を飲んでけんか、組んずほぐれつの大乱闘、警官が鼻骨骨折、顔面打撲の重傷、県議の弟も軽傷を負った。コザ署が捜査に乗り出したが、両方のいい分がかなり食い違っている。しかし、酒の上とはいえ公職の県議と社会の秩序を正すべき警官が、ささいなことで血を流す乱闘を演じたことで、目撃者や調べに当たった県警でもあきれており、社会の批判をかっている。訴えでコザ署が現場に急行、両者を連行し、事情聴取したあと帰宅させ、本格的な取り調べは十二日から始める。(中略)

引用元:昭和48年11月12日付琉球新報9面

この記事のすばらしいところは題字の配置が完璧なことです。『県議と警官が乱闘』の大見出しで読者の注意を引き、『警官重傷 – 小渡兄弟タグマッチ』でじわじわ感を演出するあたり編集者には心から敬意を表したくなる程の圧倒的なセンスの良さです。現在の沖縄マスコミにはこれほどセンス溢れる題字をつける編集者がいるかどうか。編集局は昔の記事を一から見直したほうがいいのではと思わざるを得ません。

そして翌日の〈金口木舌〉がこれまたすばらしい内容でしたので全文を書き写しました。

金口木舌ささいな口論から、現職県議、村議員、警官がいりまじって派手な大立ちまわりを演じ、双方にケガ人が出るという不祥事が起こっている。事件の原因や経過はどうあれ、指導的立場の人たちが、酒を飲んでのこととはいえ、乱闘さわぎを起こすということは弁解の余地はあるまい

▼カーハガリンドー!(皮をはぐ)といったことが、乱闘の発端となっているようだが、まさかいった本人もネコ、イヌ、ハブではあるまいし本気で皮をはぐといったとはおもえない。皮をはぐことは西武劇のインディアンなどにみられるが、県下ではまだそのような事件はきいたことがない

▼友人同士の間では、よくじょう談で同様な言葉をきくことはあるが、こんどの事件で、いわれた本人はどのように解釈したのか。皮をはがれて三味線にでもされるとでもおもったのか、入院するほどの重傷を負わせてしまった。勇気がある。おとな気ないなどいろいろ批判はあろうが、いずれにしろ、住民から信任されて当選した県議や村議、社会秩序を保持する立場の現職警官のやるべきことではあるまい。

▼議員や警官の品位をいちじるしくキズつけたといっても過言ではない。当分は職場や家庭でその話題でもちきりだろうが、まったく困ったことをやってしまったものだ。これは”非行防止”とか、”暴力をなくして明るい街”にと県民に呼びかける県民運動にも大きく水をさしたことになる。とくに若い人たちに与える影響は深刻だ。県会、村会、警察の関係者にしても大きなショックだろう。これからの取り調べで、事件のくわしい内容が明らかにされようが、有力者、同僚だからといって手かげんしないことだ

▼有力者だけに世間に与える影響が大なるだけに黙視するわけにもいくまい。当事者たちは反響の大きさに、

いまごろきっと後悔してオド、オドしているに違いないと推察される。

▼大変な失敗をやったものだと苦しい自問自答を繰りかえしながら、五尺の体をちぢこませているだろう。だがいまごろ悔いても遅すぎよう。みずからまいたタネであり自業自得としかいいようがない。

引用元:昭和48年11月13日付琉球新報1面

古きよき時代の新聞記事のすばらしさにブログ主は謎の感銘を覚えつつ、このセンスのよさは是非取り入れたいものだと決意した次第であります(終り)。