旭琉会の多和田真山二代目会長が射殺された9日、沖縄市の中の町社交業組合(伊佐彰一組合長)はその日のうちに緊急理事会を開いた。組合に加盟している店だけで380軒を数える中部地区最大の飲食店街。午前1時過ぎという時間はまだ人通りが多い。その真っただ中で発生したテレビドラマもどきの殺人劇。しかも舞台となったスナック「COOL」(クール)と組合事務所は目と鼻の先。組合員が街のイメージダウンを恐れたのも無理もない。伊佐組合長はじめ各理事は、客が寄り付かなくなるのを心配、対策を練ったが、救いは「一般住民にけががなかったことと犯人がすぐ捕まったこと」という。
“小さな暴力も許さぬ” / 「防衛」で立ち上がる社交業組合
同組合では沖縄署(宮城繁夫署長)とタイアップ、島割りによる暴力団進出の事前防止作戦の一環として今年8月、加盟店1軒1軒の入り口や内部に “暴力団追放” のステッカーを張った。ステッカー張りは、これまで同署が管内の各社交業組合と話し合い「縄張り料は絶対に払わない」との確認に次ぐ暴力団壊滅作戦の1つ。
暴力団の島割りを防止するため、沖縄署では特別捜査班を編成して取り組んできた。同署によると管内には富永、沖嶺、上里、座安の各旭琉会組織があり、ちょうど胡屋十字路で交差する国道330号と県道20号を境に沖縄市を4分割する形。組員は富永一家の70余人を最高に全部で200人余という。それぞれの組事務所は島割りに基づき、富永が市内の諸見里、沖嶺が胡屋、上里が中央、座安が照屋に構えている。
多和田会長が “強行指令” を発した島割り制度で、各一家は上納金工面のため縄張り料徴収の動きに出る。しかし、警察の業者に対する徹底指導がゆき届いているため思うようにははかどらない。8月には市内のスナック経営者から縄張り料を脅し取ろうとした座安一家幹部が、同署に恐喝未遂で逮捕されている。当然、台所が火の車となる組が出るのは予想される。それば、今回の会長殺害という暴力団の “カタ” のつけ方につながったのでは、とみられている。
今年に入り、浦添や那覇の各市議会が「暴力団追放宣言決議」を全会一致で採択している。また、暴力団排除の住民大会も各地で開かれている。また市議会でも決議を行っていない沖縄市でも、事件後、住民大会開催の機運が盛り上がりつつある。多和田会長がスナック「クール」で飲んでいた洋酒にひっかけて「水(島)割はパーになった」と語る捜査員もいる。
暴力追放の住民大会や議会での決議も重要なことに違いないが、なによりも大事なことは警察まかせにするのではなく、業者も住民も “小さな暴力も許さない” という強い態度だ。「暴力追放」をかけ声だけに終らせてはならない。(沖縄)(昭和57年10月14日付琉球新報15面)
コメント
Comments are closed.