11月6日の沖縄タイムス一面に、10月27日名護市で開催された作家の百田尚樹さんの講演会に参加した記者の署名記事が掲載(大弦小弦)されていました。全文を掲載しますので読者の皆さん、ご参照ください。
作家の百田尚樹氏から「悪魔に魂を売った記者」という異名をいただいた。出世のために初心を捨て、偏った記事を書いているからだという。数百人の聴衆がどっと沸き、私も笑ってしまった▸先月末に名護市で開かれた講演会。事前に申し込んで取材に行くと、最前列中央の席に案内された。壇上でマイクを握った百田氏は、最初から最後まで私を名指しして嘲笑を向けてきた▸特異な状況だからこそ、普通に取材する。そう決めたが、一度メモを取る手が止まった。「中国が琉球を乗っ取ったら、阿部さんの娘さんは中国人の慰み者になります」▸逆らう連中は痛い目に遭えばいい。ただし自分は高みの見物、手を汚すのは他者、という態度。あえて尊厳を傷つける言葉を探す人間性。そして沖縄を簡単に切り捨てる思考▸百田氏は2015年に問題になった自民党本部の講演でも「沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と話している。県民は実際に沖縄戦で本土を守る時間稼ぎの道具として使われ、4人に1人が犠牲になった。歴史に向き合えば本土の側から口にできる言葉ではない▸差別と卑怯の言葉は続く。百田氏はなおも「反対派の中核は中国の工作員」などとデマを並べ、沖縄への米軍基地集中を正当化する。「沖縄大好き」というリップサービスがむなしい。(阿部岳)
この記事を読んだ感想は、第一に「講演会行けばよかった」と心底後悔したことと、次に「なんで今ごろ署名記事を掲載したのだろう」という疑問です。ブログ主が思うに、講演会が終わったあとで百田さんと沖縄タイムス記者とのやり取りがネット上でライブ中継され、さらにYouTube でアップロードされたことに対する反響が大きかったのでしょうね、それでタイムスとしても何らかの対応策を講じざるを得なかったと考えられます。
該当の記事ですが、百田さんの人間性を疑うような内容で纏められて正直なところ不快な印象を受けます。百田さんは「中国が琉球を乗っ取ったら、阿部さんの娘さんは中国人の慰み者になります」と発言したようですが、実際に外国の軍隊に占領された場合はその可能性は十分にあります。沖縄戦直後の昭和20年から琉球政府が設立された27年までは、沖縄もまさにそのような状態で、ブログ主の母も「夜は怖かった。だから戸締りは頑丈にして寝た」と証言しています。
今年三月の石嶺香織前市議が起こしたネット上での炎上事件で、沖縄タイムスは「『絶対に起きる』というのは言いすぎだった。石嶺氏も謝罪し撤回している。ただ、投稿全体は素朴な不安の表明だった。配備で隣人となる自衛隊は災害派遣が評価されるが、いざとなれば実力で目的を達成する組織である。女性や子どもが真っ先に戦争の犠牲になることも、歴史が示している」と紙面で書いているではありませんか。ご自身の娘を例えにされて感情を害されたと予想できますが、そんな挑発は私人ならともかく、新聞記者として来場しているならば適当にあしらえばいいだけの話です。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/90338
「百田氏は2015年に問題になった自民党本部の講演でも『沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ』」と過去に発言した件についても、日本の人口は1億超えますからね、そういう考えの持主も当然いることは予想できます。だから「歴史に向き合えば本土の側から口にできる言葉ではない」とあえて指摘する必要はありません。「おバカなこといっているな」ぐらいで流せばいいのです。
ブログ主は仕事でクレーム対策を担当したことがあります。よく考えると些細としか思えない事例を殊更に強調するクレーマーは現にいますが、その心理は①なにか触れられたくない、隠したいことがある、②内心不利だとおもっている、③感情を害された、の3点に集約できます。今回の阿部記者のコラムはまさにクレーマーの心理そのものでズバリ②と③に該当します。講演会後の百田さんとのやり取り動画の反響が予想以上にダメージを与えたのでしょうか、記者の追いつめられた感がハンパありません。だから“人格攻撃”と誤解されてもやむを得ない記事を掲載したのではと思われます。
こんな記事を掲載するぐらいなら「中国の脅威はない、沖縄を侵略することはありえない」あるいは「反対派の中核は中国の工作員ではない」とのキャンペーンを紙面上で展開すべきです。むしろそれがクォリティーペーパーの務めではありませんか。ブログ主は沖縄タイムスの“大人の事情”は寡聞にして存じませんが、記者のレベルが予想以上に低いことに対して心底がっかりしました。実に残念なことです。(終わり)
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