沖縄の右翼

東声会支部が誕生 沖縄の右翼が表面化した。警察当局では教公二法問題をめぐり騒然とした政情を背景に起きた革新団体、個人にたいする一連の放火、脅迫事件は、関連性があり右翼団体の仕わざであると言明し、30日白昼発生した「福地事件」を政治テロの疑いが濃いとしている。

昨年8月、本土の関東一円に勢力を持つ広域暴力団「東声会」=町井久之こと鄭建永会長=が沖縄に同会の支部を設けたことが本土警察庁と警視庁によって確認された。警察本部の調べによると、東声会沖縄支部は昨年夏結成された。宜保俊夫支部長(那覇市内の会社重役、那覇市若狭町1の383)。組員の数は80人前後だとみられている。宜保支部長は終戦後、沖縄で暴力団のメンバーのひとりとして警察の追及を受けたことがある。

同時、新垣淑重警本部長は東声会沖縄支部について「本土の暴力団は取り締まり当局の追及にあって資金的にも組織的にも行き詰っているので、沖縄の暴力団組織にテコ入れする余裕などは考えられない」と語り、さらに「東声会は行動右翼である」と言明した。

行動団体は2~3 / 警察もまだ実態つかめぬ

反共理念に共鳴 宜保俊夫東声会沖縄支部長は東声会に入会していることを認めたあと「町井会長の反共理念と行動右翼としての会のあり〔方〕に共鳴して入会した。なわ張り料をとるとか暴力ざたを起こすなど反社会的な行動はしない。東声会は反共の行動的右翼団体であり、暴力団とはちがう」と東声会について説明した。沖縄で正式に右翼団体として名乗りを上げたのは、戦後、東声会が初めてである。東声会は昨年6月に組織を解散、その更生団体として「東亜友愛生活協同組合」(東京・新橋在)を結成、組員の更生、保護にあたっている。東声会沖縄支部もそれに伴い、東亜共同組合沖縄支部と改められた。宜保支部長は「東亜共同組合と組員の更生、保護についての連絡はもっている。われわれの組織は教公二法などにからむ政治紛争には一切関係していない」と話している。

警本の資料によると、沖縄で右翼的な要素を持つ団体、個人は10数以上にのぼるといわれる。これまでの立法院混乱事件、立法院選挙のたびに暗躍する暴力団組員、労働運動活動家にたいする暴力事件、宗教団体による右翼的言動、行動など数多い。しかし警察では右翼団体や構成員の実数や実態をはっきりつかんでいないようだが「たいした数ではないもの」と見ている。行動を起こす右翼団体としては2~3の団体がマークされている。

ヤクザと区別つかぬ 警察では教公二法をめぐって起きた一連の事件は関連性があり、右翼の行動と見ている。まず「浜端議員を守る会」と名乗る東声会員が琉大学生会や、港連労事務所に押しかけた事件にはじまり、3月3日の県労協本部荒らし、同10日、社大党本部放火事件と続き18日にはR行動隊と名乗る男らが沖縄教職員会事務局と屋良会長宅に押しかけた。R行動隊の会員は「われわれは右翼ではない。右翼であればテロをやるはずだ」と言明しているといわれているが、警察では「R行動隊の動きからみて右翼団体と断定できる」としている。

「行動右翼」とは学者の説明によると「街頭右翼あるいは暴力右翼ともよばれる」となっている。さらに本土の右翼団体として日本国粋会などの組織暴力のほかに宗教団体の「生長の家」、左翼学生運動に対抗して生まれた「反共学生団体連合」などがあげられる。

鉄の結束と同志愛と 「われわれ青年行動隊は民族の伝統を維持し、愛国戦線の前衛として一切の破壊的革命勢力と対決することを至上の使命とする。今や日本民族の栄誉は共産主義者の売国的背信によって破壊されつつある。わが郷土も例外ではない。純粋にして愛国の自然的発露である民族運動が共産主義者の革命的手段に利用されるに至った。彼ら破壊的集団は政治、経済、文化の全分野にわたって深く浸透し、とくに民族の中枢である教育が反対側に利用され、民族の伝統が破壊されつつある。この襲いくる左翼攻勢に対抗し、攻撃することを使命とする青年行動隊は重大な歴史的任務を深く自覚する者である。よって行動隊員は隊の規律を守り、鉄の結束と血の同志愛のもとに愛国の大義を完うすべく行動する」とある。

警察当局では「この綱領からみて右翼団体の要素をじゅうぶんに含んでいる」と見ている。さらにR行動隊の発行するパンフレットには「監禁と脅迫でできあがった協定書を中心にして政治道徳を論ずる野党、教職員会との妥協はありえない。もし野党が力によって得たものを正当化するならば、われわれも力によってその不当性を実証するであろう。野党と教職員会が議会をロボット化し、美辞麗句を並べて暴力を正当化し賛美するならば、われわれも暴力をもって報いるであろう」といっている。R行動隊の本質を現わしたものといえよう。(昭和42年3月31日付琉球新報11面)