今月10日付琉球新報上で “〈透視鏡〉基地負担へ 県が「外交」” と題した記事がSNS上で物議を醸し、担当した記者がツイッター上で「記事の意図」を数回にわたって説明するという事態になっています。
今回は参考までに渦中の記事全文を書き写し、そしてブログ主なりの解説をアップしますので、読者のみなさん是非ご参照ください。
記事全文は1300文字弱で非常に読みやすく、その要旨は前文にある通りですので紹介します。
軍事力の強化を続ける中国への対応を念頭に、日米の軍事一体化が加速する中、県は基地が集中することによる沖縄の軍事的な脆弱さなどを対外的に発信し、分散化を求める戦略を立てている。それと同時に2022年度以降、アジア太平洋地域の国々へ働き掛け、協力関係を構築していく構えだ。
説明不要かとは思われますが、沖縄への米軍基地負担軽減のために、アジア太平洋地域へ積極的に働きかけていこうという内容で、それを「自治体外交」と表現しています。
誤解を招きやすいのが “県が「外交」” あるいは “自治体外交” という表現で、現行法体系(例えば日本国憲法第92条~95条)では地方自治体による独自外交の規定はありませんから、通常の外交ルートでアジア太平洋地域へ積極的に働くことは不可能です。
おそらくその点を意識したのか、県が想定しているのが “協力可能な項目に連携に関する覚書(MOU)締結” という契約形式であり、この方法では締結までの手続きは簡素化されますが、今度は法的拘束力がありません。それ故にMOUは「国際交流協定」という訳語を利用する場合があります。
となると、問題点が2つあって、一つは現行法で地方自治体と他国がMOU(了解覚書)を締結することが可能なのか、もう一つが法的拘束力のない了解覚書を締結することが、結果的にアジア太平洋諸国との協力関係の構築に役立つのかという点です。そして〈透視鏡〉にはその点については触れずに、県の基地対策統括監の談話をそのまま掲載しているだけなのです。
しかも、識者として野添文彬准教授のコメントを掲載して、県の取り組み姿勢を肯定するような文章構成になっています。だがしかし野添准教授のコメントをよく読むと「~つなげることは可能だ」「~可能性がある」あるいは「~できるのではないか」などと「仮定形」で結ばれていて、それはつまり(誤解を恐れずにハッキリ言うと)准教授側が琉球新報記者の取材意図を察知して “適当にあしらって” いるのです。
今回の記事の最大の難点は、日頃からマスコミの存在意義は「権力の監視」であると主張する輩が
結果的に県庁という権力の “提灯記事” を掲載している点
に尽きます。そしてこの記事に目を通したブログ主は、県の施策は溜政仁基地対策統括監のコメントにあるように
「アジア重視の米国の戦略は当面、変わらないだろう。『だから沖縄の基地を強化する』と言われると困る。だめだと言い続けなければならない」
との
発信することそれ自体が目的になり、最終目的の基地負担軽減は達成しない
との結論に達しました。そしてそのことを指摘するのは本来マスコミのお仕事でありますが、いわば “仕事したふり” になりそうな施策を厳しくチェックしない今回の報道姿勢に悲しみを覚えつつ今回の記事を終えます。