今回は平成8年(1996)に現敷地での全面改築の経緯について記載します。平成17年(2005)3月に刊行された『普天間第二小学校創立35周年記念誌』には第7代校長の手記が掲載されていますので、該当部分を抜粋しました。ご参照ください。
(中略)就任して間もない頃(平成2年)、PTAに積極的に参加して活動してくれる役員の一人から非常に深長な話を聞いた。話の概要は次のようなことであった。
「うちの子は、上の子も中の子も、この学校の教育環境の中で、大事な義務教育課程(小学校課程)を学習し卒業していった。下の子もまもなく卒業することになる。一時期、基本的な学習環境の不備に不満を抱き、教育環境のよいと思う学校に転校させようと思ったが、通学区域の規定があり、望みはかなえてもらえなかった。早期に本校の教育環境の適正な整備を図らないと、この地域の子ども達の義務教育が心配である」…ということであった。
このことは、単にPTA会員の不平不満の話ではなく、多くの会員が同じことを感じていると思った。
その時点の学校の整備状況をチェックしてみた場合、校舎(教室)は老朽化し、床のタイルも全面ハク離した状態で、清掃してもきれいにならない。教室の背面掲示板のベニヤ板も古ぼけて作品の掲示ができない。学校移転問題も暗礁に乗り上げた状態。校舎全面改築問題も遅々として進展が見られない。運動場も狭く、大きな体育的行事等は、喜友名在の軍用地内の通称「第二運動場」で行わなければならない不便さ、不自由さ、移動に時間をとられ、十分な学習時間の確保が難しい。夏は暑さが厳しく汗びっしょりで次の授業が計画通り出来ない。…等々不備の状態が多々あった。
そんなことがあった数日後、当面する学校の重点目標を見直し、確認するため、集めた情報を整理し、校長の職務の重点目標を見直し、確認するため、集めた情報を整理し、校長の職務の重点目標を次のように定め全力を尽すことにした。
(中略)校長に就任して二年目(平成3年)のPTA総会が近づき、役員間で要請書の内容について意見交換や調整が始まった。
ある日、応接室でPTA会長とお茶を飲む機会があった。その席で学校を預かる校長の立場からの見解を軽い気持ちで述べた。
その内容は、①校舎は年々老朽化が進み、最近は天井のセメントが自然落下する場所が増えてきた。②在校時の自動の安全確保を図るため、用務員に指示して点検を増やしている状況である。③校舎改築予算に対しては、文部省が高率の補助金を出しているのが現状であるが、その高率補助の制度もタイムリミットが迫ってきた。この機会を逃すと市の持ち出し予算が多くなり、校舎改築は希望が持てなくなる。④学校の敷地確保の問題も暗礁に乗り上げた状態だし、現在使用中の校舎も老朽化が進み、危険校舎になりつつある。
これまでと同じ内容の要請書で本年も要請した場合、目的の達成はほとんど期待できないと思う。ふんまんやる方ない状況にあるが、要請書の基本的考え方を見直して解決の糸口を見つける時期ではないだろうか。…等々を話かけた。
その年(平成3年)のPTA総会に提案された議題は、従来の早期移転の内容ではなく、「現敷地における早期全面改築」が提案された。提案理由と審議で紛糾し、総会の決議が取れず、数日後に臨時総会を開催し会員の賛同を得られた。いわゆる「苦渋の選択」だった。(思い出 – 第七代校長 比嘉岳雄)
この手記の内容は、『普天間第二小学校は反基地運動に妨害された?(下)【誤解だらけの沖縄基地・10】』の記述とほぼ一致します。一つだけ違う点は、比嘉校長(当時)の手記ではPTA総会の開催が平成3年(1991)になっているのに対して、沖縄タイムスの記事は平成4年(1992)9月18日に臨時総会が開催されたと記載されていることです。ただし、全面改築にいたるまでの流れはほぼ同じですので、おそらく比嘉校長の記憶違いかと思われます。
校舎の改築工事は平成6年(1994)年から開始され、平成7年には8代目校長が就任、比嘉氏は新築校舎の完成を待たずに定年退職します。そして平成8年(1996)2月1日に新築の校舎が現敷地に完成し、これで老朽化による教育環境の悪化の件は改善されました。その立役者の一人である比嘉岳雄氏の決断は高く評価されてしかるべきです。
同じく平成8年には普天間基地の辺野古移設のプランが持ち上がり、平成10年(1998)2月の名護市長選で受け入れ派の市長が当選したことで、移設計画は進展→このまま移転すれば万事解決のはずでしたが、平成21年(2009)の鳩山由紀夫内閣(当時)誕生が普天間基地の移設問題を解決不能なまでに複雑化してしまいます。校舎新築後の第二小にとって最大の災害は普天間基地の存在ではなく、鳩山由紀夫氏、および当時の民主党中心の連立政権であったことは疑いの余地がありません(続く)。
【関連リンク】
普天間第二小学校は反基地運動に妨害された?(下)【誤解だらけの沖縄基地・10】