ロックとコザ(1994)川満勝弘(愛称:カッちゃん)編 – その31

□音楽の現状とルーツ こういうアメリカの若者を相手にしているから、ロックをやっていると、アメリカでは音楽のどこを大事にしているということがすぐダイレクトに伝わるし、そういう基本的なものがわかってくると、こことこことここの三つを大事にすればだいたいのものは、あとは時間が経てばマスターできるものだというのがわかるんです。これを見失って枝葉だけのものを仕上げていっても、アメリカでは通用しないというのが実状です。

でも、日本は日本で上手くこれをアレンジして、日本なりに消化しているんです。

日本のフォーク界、ロック界というのは、みんなアメリカのフォーク界、ロック界、イギリス系音楽、アメリカとイギリスが混じった音楽(この二つの音楽)があるんですよ。

それで、こうして日本に流れて来て、日本で消化されて、またそれがアレンジされてやったのがどういうジャンルの音楽というのが、だいたいわかるわけです。

□若い沖縄バンドたち 「りんけんバンド」は、沖縄から出たいけど出たくないし、喜納昌吉もそうです。

レゲエがなんで世界に出たかというと、あのリズムとメロディーで、歌詞を英語に直したんです。その歌詞の内容があまり露骨な反社会的な歌詞じゃなくして、愛の歌を英語に直したものだったから、西洋の人にも受け入れられたわけです。

世界中に民族音楽があるんだから、喜納昌吉も照屋林賢も沖縄のトゥントゥンテンテン(というリズム)とメロディを英語に直した歌詞で愛の歌を唄ったら、またわかりませんよ。私が、そうやってみたらどうかと一〇年前にいったけど、今ごろやってみようかなっていっています。しかし、沖縄の三線の音は、沖縄方言が一番ぴったりだと思いますが。

「ワルツ(バンド名)」は、特に黒人のリズム&ブルースというのを聴いているわけです。

音楽というのは手繰っていくことができるので、何年、一〇年単位で、例えば一九五〇年、六〇年と手繰っていって、西洋ではどういうミュージシャンがいて、クラッシックではどういう感じ。この民族音楽のことも、これを手繰っていって、これから白人音楽は教会のゴスペルからロックンロールがこうなんだかんだといって、「ワルツ」のローリー(普久原朝教さん)はそこを大事にしているんです。

ローリーは、いつまでたってもガーガーアビーして(ガーガー声で)歌が上手くならないけど、彼のオリジナルいいけどね。私も歌は下手だけど。彼も私といい勝負するぐらい歌下手よね。

だから、あれ引っ張ってリズム&ブルースを全部基礎にして、それに少しファンキー的なものをくっつけてミックスしてやっているけど、それでウチナー・グチ・アビーして(沖縄方言で歌って)やっているんです。

だから東京でレコーディングしたとき「ヌーガ・イッター・ウチナー・グチ・アビール(なんで沖縄方言で歌うの、意味わからんよ)といわれたんですが、彼(ローリー)は「いや、ワンネー・ウチナー・グチ(俺は沖縄方言)しかやらない」と答えたそうです。彼はそういうタイプなんです。

また、喜納昌吉は歌うときに演歌みたいになってしまいますが、

演歌といったらあれワジル(怒る)

けど、けっきょく昔からの余韻があるわけです。(続く)