ロックとコザ(1994)川満勝弘(愛称:カッちゃん)編 – その18

□アメリカでレコーディング 一九七〇(昭和四五)年にアメリカでレコーディングしようということで、ワーナーブラザーズの映画会社にレコーディング部があって、そこのスタジオでやりました。

これは、「デージだったよ(すごかったよ)」というディズニーランドでバカ受けした噂が日本にまできているんです。それで、キャニオンレコード会社から「イッター(君たち)はアメリカにむいているから、トォー・アンシェー・イッター(さあそれなら君たちの)レコーディングはアメリカでやれ」といわれ、二枚目のLPレコードはアメリカのワーナーブラザーズのスタジオで無事レコーディングを済ませたんです。

このアメリカでのレコーディングは、無事二枚やりました。

また、カリフォルニアにある有名な「ウィスキー・アー・ゴーゴー(ライブハウス)」で演奏もしました。

□とに角でっかいアメリカ大陸 そのときのハプニングはもうたいへんですよ。笑い話がいくらでもあります。

むこうではプール付きの一軒家を借りていたんですが、お米が食べたくなってですね、朝、米を買いにスーパーマーケットに行くということで、パジャマ姿でベース(エディ)とドラム(エツー)が車に乗って出かけたんです。

それで、一回フリーウェイに出てもう一二〇キロで飛ばしているんですよ。そのフリーウェイの道を間違って、まっすぐ外線を走っていたんだけど、その外線が左に折れて下に下がって行っているわけです。彼らは、沖縄の感覚で簡単に元の道に戻れると思ったようですが、もう簡単には戻られるわけないんです。

二人は、フリーウェイにのっていったら五、六分のすぐそこのスーパーマーケットにだから、パスポートとお米代とかの少しのお金しか持ってないんです。ショッピングしながら、銀行に入れてあるキャッシュカードみたいなものでお金もおろしにという気持ちもあったんじゃないのかな。しかも恰好はパジャマにサンダルだったんです。

それで、フリーウェイにのっていったら、これがまわってまわって、「アマン・カイ・ムドゥラン・ト・ナランド・ォー。エー、エツー、アマンカイ・ムドゥ・レー(あ、あそこに戻らないといけないよ。おい、エツー、あそこに戻れ)」、「アンスミ・ナー、アマカイ・イチュ・シェー、チャンニー・サーニ・イチュガ。アレェ・ヒジャイル・ヤミ、マーヤガ(そうするがもう、あそこにいくには、どんなして行くのか、あれは左なのか、どこか)」「ヌーガ・ワッター・シチャン・カイ・イチョール(何で俺たちは下に降りているのか)」というふうに二人でもこうなって、とにかくあそこに戻らないとデージ・ナトーン(たいへんなっている)といって、一生懸命もうその辺を歩いている人たちに「あそこに行きたいんですけど」と戻る道を聞いているんです。

見たら「これ東洋人フージーヤッサー(みたいだな)」という感じさもう。

You know,we want to go?(私たちむこうに行きたいんだけど、あんたその行き方わかる?)」、「L.A.LosAngeles(ロサンゼルス)」と聞いているわけです。

それで、「L.Aはむこう。イッター・マーカラ・チャガ(お前たちどこから来たのか)。イッターは今むこうから来たからさ、あそこに向かえ、そしたら大丈夫」と教えてくれたのが五、六人いたようなので、「むこうに行ったら大丈夫みたい」ということで行ったら、砂漠みたいなところへ来ているわけです。

そしたら、「もうガソリンもない。デージ(たいへん)なっている。ここから家ないようヤー、デージなっている」と覆っていたらしいんですが、最後にインディアンみたいな人に聞いたら「イッター・マーカラ・ガ(おまえたちどこからか)」といので、「アマ、ウワービ(あっち、上の方から)」と答えて、「You Know、(おまえ知っている)、こっち(上)は太陽、こっち(下)は地面、ロサンゼルスむこう、むこう向かえ」といって教えてくれたそうなんです。そこで「むこう向かえって、今むこうから来たのでどうやって?」と彼らが聞き返すと、「だから、とにかく道は曲がっていてもあそこに向かいなさい」とこんな具合だったそうです。

そして、もうガソリンは切れてきて「エー(おい)、デージなっている」と心配だし、まただんだん夜になって危なくなってきて、食べ物もない、人もいない、ガソリンスタンドにも止められない、電気もないので「ワッター、ンマン・ジィ死ヌガヤー(俺たちここで死ぬのかな)」と思いながらこういった状態が続いていたそうです。

そして、ようやくガソリンスタンドのある五、六軒の小さな部落に着いたんです。でも、ガソリンもないから、南の方から国境超えて入って来るメキシコ人がいますが、こういうのに間違えられて、信用してもらえないわけです。

(二人はガソリンを入れてほしいのですが)、英語もわからないからガソリンスタンドの人に話がなかなか通じなくて、この人は「No,No,No,Money,Money(だめだめ、お金、お金がないとだめ)」とかなんとかいっているので、「エー(おい)、パスポート」といってこれを出して見せながら、「I have japanese Yen.大丈夫(私は日本円なら持っているけど、これでも大丈夫ね)」といっても、やはり通じなくて「わからん。ウリヒャー(どうしよう)」という感じだったそうです。

しかし、ようやく通じて、ガソリンは入れるけど、でも絶対信用はできないからと二人のパスポートをもって、「円、これ日本のお金みたいだから、よし銀行行く」といって、そのガソリンスタンドの人も車にのって銀行までついて来たそうです。(続く)