本日(3月15日)の琉球新報1面に次のような記事が掲載されていました。
山城議長に猶予刑 那覇地裁 業務妨害など認定
名護市辺野古の新基地建設や東村高江の米軍北部訓練場ヘリコプター発着場建設に対する抗議活動を巡り、威力業務妨害や公務執行妨害・傷害などの罪に問われた沖縄平和運動センターの山城博治議長(65)ら3人の判決公判で、那覇地裁の柴田寿宏裁判長は14日、「米軍反対運動の中で行われたが、犯罪行為で正当化できない」として山城議長に懲役2年(求刑同2年6ヶ月)、執行猶予3年を言い渡した。
ブログ主は事件そのものには興味ありませんが(ただし山城被告ではなくて“議長”と記述したところは気になります)、朝刊総合3面に記載されていた香山リカさんの傍聴記は興味深く拝見しました。読者の皆さん是非ご参照ください。
山城議長判決 傍聴記 – 香山リカ氏 精神科医、立教大学教授
公文書の改ざん問題で揺れる安倍内閣。何千人もの人たちが集まった総理大臣官邸前での集会に参加した翌日に来県し、米軍基地建設などの反対活動中に逮捕された3人の判決公判を傍聴した。
裁判冒頭、3人に執行猶予付きとはいえ有罪が告げられ、その後、判決主文が読み上げられた。「適法に行為を遂行する防衛局員に対してそれを妨害した」「(3人が行ったことは)憲法21条で定められた表現の自由を逸脱している」など、あたかも3人が身勝手な違法行為をしたかのような文言が並ぶ。これらの行為が「民意に反する基地建設に反対する活動の中で起きた」という特殊な事情を考慮した言葉は、たった一言しかなかった。
その一言は「反対活動中に敢行されたもとであるが」の「であるが」だ。そして、その「であるが」の後にはすぐ「犯罪行為であって正当化できない」と再び違法性を強調するような言葉が続いた。
とりわけ山城博治沖縄平和運動センター議長に対しては「悪質だ」「リーダーとしてまわりをあおった」「強い非難を免れない」とたたみかけるように否定的な言葉が並べられた。しかし、考えてみたい。そもそも彼らは、いったい何のために道路にブロックを積み、防衛局職員と対峙することになったのか。私利私欲や身勝手な願望を抱いてのことか。
それは違う。選挙という民主主義的な手続きで、あるいは署名や集会で、米軍基地建設に反対の意思を示してもそれが踏みにじられるばかりだから、やむなく現場に出かけて直接、抗議の声を伝えていたのだ。
その背後には、何万、何十万という今沖縄に暮らす県民、基地に反対しながら無念にも世を去った人たちの思いや声がある。それを、「であるが」というたった一言で表し、握りつぶそうとするこの判決に安倍政権の姿勢がそのまま集約されている、そう思った。
冒頭で述べたように、その安倍政権のうそは今ついに暴かれ、全国で怒りの声が湧き起こっている。「沖縄での弾圧は、実は全国で起きていたのだ」と人びとはようやく気付いたのだ。「であるが、権力に従うのは仕方ない」では、もはや済まされない。顔を上げて法廷をでる山城さん、稲葉博さん、添田充啓さんの後ろに、総理大臣官邸前で声を上げる無数の人たちの顔が見えた気がした。(1面に関連)
この記事を読むと、香山さんのコメンテーターとしての凄さを実感します。それは(あくまでもブログ主の想像ですが)今回の判決をある程度予測して、沖縄2紙の読者が喜びそうな記述に纏めたからです。おそらく琉球新報社から事前に傍聴記を依頼されていたのでしょうか、公判中に頭の中で構想を練って判決後にうまく記事に纏めたと思われます。
しかも時事ネタである森友案件と絡めて安倍政権を批判する文章の構成が秀逸です。この人は本当に賢いんだなと実感します。そして沖縄マスコミから重宝される理由もよく分かります。ただひとつ残念だったのは、顔写真の準備が出来てなかったことです。フォトショップで加工する時間はなかったのでしょうか?(終わり)。
【比較】
・『日曜の風』に掲載されている香山リカさんの写真。
・今回傍聴記に掲載された香山リカさんの顔写真。