不振続く沖縄勢

4月3日付の日刊スポーツ5面に沖縄の高校野球に関するコラムが掲載されていました。先ずは全文をご参照ください。

「野球の国から」高校野球編 – シリーズⅢ 2018 春 – 不振続く沖縄勢

中学生流出が悩み

前回記念大会だった08年の選抜は、沖縄尚学が県勢2度目の優勝を飾った。その2年後には、興南が春夏連覇。しかし、ここをピークに沖縄勢は甲子園で勝てなくなった。11年以降、春夏で3度の8強入りが最高。今大会は3年連続での出場校なし。沖縄に何が起きているのか?長年、強化に携わってきた沖縄県高野連の元理事長・安里嗣則氏(78)は言う。「中学生の県外流出が増え、九州大会を勝てなくなった。会議でもよく話に挙がる。悩みの種になっている」。過去3年で合計約200人、この春には約70人の中学生が県外校に入学した模様だ。

 かつては高校野球の「後進県」だった。72年の本土復帰以前には、併殺を完成させただけで、拍手が起こったという。そこからオール沖縄で強化に取り組んできた。体力向上を目的に実施した「野球部対抗競技会」は今年1月で第46回を数えた。全国で初めて1年生大会を開催。沖縄水産・栽弘義監督(故人)をはじめとした指導者の努力で、全国制覇に至った。潮目が変わったのが、興南の春夏連覇だ。県の中学野球関係者は「沖縄の子だけであれだけのチームが作れると県外高校の見る目が変わった。もともと身体能力は高い」と言う。気質の変化もあった。昔と比べ、生徒も島を離れることに抵抗がない。別の関係者は「将来を考えれば、県外の強豪校でプレーをしたいと思う子供が増えた。大学進学までのサポートも整っている」と話す。

沖縄県にとっては、頭の痛い「流出」だが、球児にとっては進学の選択肢が広がる。巨人のルーキー大城は東海大相模から大学、社会人をへて、プロに進んだ。選抜に初出場した松山聖陵の荷川取秀明監督は沖縄尚学の99年春優勝のメンバーだ。今回のベンチ入りで、9人が沖縄出身。高橋慎吾部長は荷川取監督について「沖縄尚学の教えを継承しようという思いがある。技術だけでなく、ゴミを拾うとか、人間性を大事にしている。監督自らが率先して、礎になっている」という。沖縄野球の魅力がその土地と融合し、新たなうねりとなる。安里氏は力をこめた。「どうやって、また引き上げていくか。乗り越えてやっていきますよ」。県内校も指導のさらなる充実に動き出す。指笛の応援でスタンドが沸く春を楽しみに待ちたい。【田口真一郎】

上記のコラムに記載されている通りで、中学を卒業した球児が県外へ進学するケースは以前から問題視されていました。だがしかし、「気質の変化もあった。昔と比べ、生徒も島を離れることに抵抗がない」との指摘もまた事実で、現代の沖縄球児は本土に対してコンプレックスを持っていません。「普通にやればできる」と思っているので毎年多くの生徒が県外に進学する流れになっています。この点は実に頼もしい限りで、以前当ブログで掲載した「翁長助裕さんが指摘した沖縄の人たちの欠点」の時代と比較すると隔世の感があります。

ちなみに選手の県外進学が沖縄の高校野球の成績どのような影響を与えているか、一番分かりやすいのが秋季大会です。平成25年(2013年)に、県代表の美里工業と沖縄尚学が秋の九州大会決勝を戦ったのをピークに(この年は沖縄尚学が秋九2連覇)実は年々沖縄のチームの完成度が下がっているのです。新チームの完成度の低さが、そのまま秋の九州大会の不振につながっています。中学時代に完成度の高い選手が県外に進学した結果、このような事態になったのです。

高校生の場合冬トレで劇的に成長しますから、春の九州大会はなかなかいい成績を上げていますが、甲子園では平成27年(2015年)の興南高校のベスト8以外ぱっとしない状態です。ブログ主は野球留学には大賛成の立場ですので、県内の中学生が県外へ進学するのは勿論喜ばしいと思っていますが、郷土の高校生が甲子園でなかなか勝てなくなってきた現状に少し寂しい思いをしているのも否定できません。ではどのように対応すればいいのか、具体的には

  • 本土と沖縄の高校球児にフィジカル面で差がつき始めたので、県高野連が率先してフィジカルトレーナを招いて定期講習会などを行い、選手の体力アップに努めること。
  • 捕手のレベルアップ。

になります。とくに捕手のレベルアップは急務です。ここ数年沖縄の高校野球の現場観戦で痛感していましたが、実は沖縄の高校野球は捕手の人材難が目立ちます。今年も全国レベルの捕手は、沖縄尚学の池間大智くんだけで、複数投手を揃えるチームは増えてきたものの、捕手に関しては実に頼りない状況が続いています。

今後高校野球の世界にも「第二捕手」が必要な時代になります。理由は1試合平均2、3人の投手継投が当たり前の時代に、公式戦で5試合(あるいは6試合)を一人でマスクをかぶり続けるのが至難の業になりつつあるからです。捕手の負担が10年前に比べると桁違いに増えています。

フィジカルトレーニングの見直しや、捕手のレベルアップは高校野球だけのカテゴリーに限らず、少年野球あるいはボーイズリーグから取り組んで欲しい案件です。ただし個別のチーム(あるいは学校)だけでは難しい部分もあり、そのため県の課題として対応すべきです。このままでは間違いなく甲子園はおろか九州大会でも1勝を上げるのが難しい時代が到来します。新しい高校野球の時代に対応した適切な強化策を(現場および高野連が)施すことを切望しつつ、今回の記事を終えます。