今月1日の琉球新報DIGITAL版によると、石垣市議会(我喜屋隆次議長)は3月定例会最終本会議において、「陸上自衛隊石垣駐屯地開設に伴い自衛官やその家族および駐屯地関係者の人権を尊重する決議」を全会一致で可決し、野党の7人は退席したと報じられていました。
同記事には退席した議員のコメントとして、「身を粉にして働く人がいる。憲法の範囲内で人権が尊重されるのは当然で、あえて自衛隊員だけに決議にするのは疑問だ」とありますが、我が沖縄本島では復帰直後の自衛隊配備において、”憲法の範囲内で人権が尊重されなかった例” が頻発したため、石垣市議会はその点を踏まえた上での先手を打った対応で間違いありません。
事実、昭和47(1972)年10月の沖縄本島における自衛隊配備に対する一部県民の反発はものすごいものがあり、当時の新聞記事にも自衛隊に対する憎悪感情がダイレクトに反映されるありさまでした。参考までに同年10月3日と7日付琉球新報記事を紹介しますので、読者のみなさん、是非ご参照ください。
復帰前後の我が沖縄には、「沖縄は歴史的に差別され続けてきたし、先の沖縄戦では友軍であるはずの日本軍にはひどい目にあわされた。戦後日本はその点についての反省が不十分であるにも関わらず、沖縄に軍隊(自衛隊)を配備する愚を犯した。しかも自衛隊は明らかに憲法違反である。それゆえに被害者である我々は自衛隊に対してダイレクトに憎悪をぶつけても構わない」との社会通念があった事実は否定できませんし、またそうすることで反戦平和活動家は結束を固めていた傾向があります。
問題は、平成そして令和の今日でも昭和のノリで自衛隊や米軍に対して憎悪感情をむき出しにした言動(ヘイト・スピーチ)が散見されることであり、実際に、平成29(2017)年3月には宮古島市議(当時)による自衛隊に対する舌禍事件が起こり、渦中の市議に対し、ネット上で誹謗中傷が飛び交う炎上騒動がありました。
今回の石垣市議会の決議に退席した野党議員も、賛成すれば支持者から突き上げられ、反対すれば在野から「人権軽視」のレッテルを貼られてしまいますので、苦肉の策として退席せざるを得なかった事情は理解できます。つまり、「自衛隊に対する憎悪を隠さない」支持者たちの影響力を無視できなかったわけです。
ただし、『県差別のない社会づくり条例』の施行により、一部県民に見られる自衛隊、あるいは米軍に対する度を過ぎた憎悪表現は激減すると予想されます。県条例の骨子案「総則」を参照すると、
1.目的 差別のない人権尊重の社会づくりに関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって全ての人が相互に人権を尊重し合える社会の実現に資することを目的とする。
2.基本理念 差別のない人権尊重社会づくりの推進は、県民一人ひとりが人権の尊重に対する理解を深め、全ての人が相互に人権を尊重し合える社会の実現に寄与することを旨として、社会全体として推進していく。
3.不当な差別的取扱いの禁止 何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分その他の事由を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。
とあり、在沖米軍人・軍属である、あるいは自衛隊員である、ただそれだけの理由で憎悪をぶつける言動は「してはならない」ことになったのです。
沖縄タイムスの阿部岳記者はツイッター上でこのように述べています。
もうそろそろ日付が変わってしまいますが、きょう4月1日は、沖縄県差別のない社会づくり条例が施行された日です。
きょうから、沖縄県は差別のない社会をつくる責務を条例上も負います。県民や事業者は、それに協力する努力義務があります。
— 阿部岳 / ABE Takashi (@ABETakashiOki) April 1, 2023
ちなみに、「県民や事業者は、それに協力する努力義務があります」と明記していますが、一番努力しないといけないのは、おそらく辺野古新基地反対運動活動家と、離島への自衛隊配備に反対する輩で間違いありません。いずれにしても公序良俗に反する言動の野放しは社会的に好ましくないため、この度施行された県条例が我が沖縄社会に好影響を及ぼすことを切望しつつ、今回の記事を終えます。